▼ ミキシング・録音のための備忘録
【DTM・宅録】
いろいろ参考になりそうな書籍などは数あれど処方箋的に役立つ即効性のあるものは少ない…ように思います。多分人それぞれやっていることがバラバラだったりするもんで。
というか前提になる入門以前に大切な事とかが以外と市販の本では抜け落ちいているように感じることが少なくなかったり…。
■更新履歴 2012/03/5 追記
というか前提になる入門以前に大切な事とかが以外と市販の本では抜け落ちいているように感じることが少なくなかったり…。
■更新履歴 2012/03/5 追記
■録りの重要性
特にギター主体の演奏の場合同じような音・周波数域に音が集中しがちなのできっちり音作りしてから録音→ミックス→マスタリングと順を追って音を作り込むようにしていく方が失敗しにくい。ミックスの段階ではコンプ類で整えてEQで補正するぐらいの気持ちで。ライン録音でDAW側でアンプシミュを使う場合、ラインで立体感を感じられるような音になっているか確認する。
ギター・ベースの音作りについて
サウンドが完成されるまで音作り・補正のためのイコライザーやプリアンプ類が複数はさみこまれる形になる。最近だとライン直というのもある。低域の出方はイコライザーをいじるよりかはアンサンブルに応じてキャビネットの選択でやってしまい、イコライザーで低域を削る方向で調整する方が自然になりやすい。ただしこの限りではなく中域に特徴をもったものなら中域のキャラをキャビで使い分けるなど工夫できる。
楽器類のイコライジングについて
例えばギターの場合各音階を弾いて音量のばらつきが少ないように調整する。しかし安物の楽器の場合もともと弦ごとの音量差や音色が極端に違う場合があります。
音の入り口に気をつける
楽器からAudio I/Fまでの経路でも音が変わってくる。方法によってどう変わってくるのか確かめることも必要。また最近のAudioI/FについているHi-Z端子に突っ込む場合でもプリアンプによって音が少なからず変わってくる。これはインピーダンスの変換を行う際に用いるトランスや回路・素子の癖によるものらしくダイレクトボックスでも音質的な傾向が存在する。
安いチャンネルストリップやマイクプリにDIがついたものもあるので楽器類のライン録音に活用するのも手らしい。
大事なこととしてギター・ベース類はラインにつっこんだ素の音の状態でフラットでありつつある程度立体感のある音をしている必要がある。やたらと変な音になることがあり、まともな音が出てないなと思ったら要注意。よくあるパターンを以下に列挙します。
- やたらと高音域がギラつき耳に痛い音になる
- 風音のようなディストーションサウンドになる
- 迫力や存在感がなくペラペラ・音に芯がない
- 中・高音のアタックがいように目立つ
- ノイズが多い
- 音が異様にこもる(Hi-Z入力だと多少ハイ落ちするものがありその場合は正常)
- 音がチリチリする(8kHz〜10kHzぐらいのこともあるしそれ以上上で起こっている場合もある)
- 低音がつぶれている
- 必要な低音域がでていない(ギター用のものをベースで用いるとありがち)
- 異様に中域が持ち上がる(低音がでていない状態で音量が大きすぎる)
- インピーダンスがマッチしていない
- 入出力のゲイン調節が適切でない
- シールドの異常
- 電池類の消耗
- 楽器本体の問題
- 音作りの問題(抜けをよくしようとしてプレゼンス・ハイを上げすぎている等)
ハイゲインには明確に基準というものが存在しないため適切な機器を自分で選択・調整する必要がある。所謂シングルコイル向き・ハムバッカー向きと呼ばれるのもその一例。ただし楽器本体のボリュームを絞ったり前段でEQを用いるなど工夫できることもある。
ベースの録音について
録音状態がよくなく低音がボコボコするすることがある
そもそもうまくインピーダンスが変換されていない場合があることに注意する。中低域でボコつく場合は300Hzあたりが出過ぎている、低音域であれば100Hz以下の出方にムラがある場合がある。
録音機器が低音を十分に録音できていないものである可能性を疑うことも必要かもしれません。
考えられる問題
- 楽器の状態がよくない(楽器が安物、整備されていないなど)
- アクティブのベースの場合
- 演奏の問題
- 録音機器 →DI、I/Fのプリ、DACに問題がある…など
安物のベースの場合4弦ベースなら3弦と4弦、5弦なら4弦と5弦のバランスが悪いということがあり、その場合は音作りの後、低域をコンパクトエフェクターやプリアンプなどのイコライザーで削り、低域を少なくし若干軽い音にした上でDAWに入力し後から低域をブーストして補うという方法でなんとかなる場合も。
低音楽器とアンサンブル
ほとんどのバスドラの音源は音ができあがってしまっているのでベースの音作りはバスドラの音に合うように作る。大前提として- アンプシミュを使ったアンプからの出音のベース音
- ライン録りによるラインのベース音
ベースとバスドラのどっちが上か下か論議がよくありますが、ベースはドラムのバスドラとスネアの間の周波数を埋めてやるようにするとだいたいうまく収まります。そのため必然的にバスドラとかぶる箇所はカットすることになります。
シールドの選択
シールドもものによってはギター向きでベースに不向きなものなどがある。安価で万能的かつ入手しやすいカナレが割とフラットな出方なのでリファレンスにしやすいと思います。ただ高級系のシールドに慣れていると音が軽いような印象をもちやすい。シールドの寿命についてははっきり言及されることがないものの、ハイもしくはローが落ちるように思います。いつ買ったか覚えがないようなものは電気的に良好でも購入当時の音質を維持しているか疑うことも必要。ただしビンテージ系の音作りの場合多少ハイ落ちしているもののほうが倍音を自然に落とせるので個人的には好きです。
最近の安いシールドではヒットノイズがのりやすいことが多いように思います。
状態の悪いものに起こること
- 抜けが悪くなる
- 特定の周波数域が強調される
- 低域の減少
- 接触不良
- ノイズの増加
- ヒットノイズ
■フェーダーにおけるレベル調整について
バスドラは○dbに、ベースは○dbぐらいになるように…などと初心者向きの解説がされることがありますがあくまで一例でしかない…と思います。例えばジャンルによってはドラムサウンドは大きくも小さくもなるし、アニソン系ではやたらと歌が大きくなったりする。DAWに参考となるリファレンス曲を一度流し込んだ上、作成しているパートを同時にならしてみてどれくらいの音量レベルをとっているか確認してみるとわかりやすいと思います。
■イコライジングについて
イコライザーをいじるときは音づくりをしているのかミックスのために音の棲み分けを作っているのか意識するようにすること。でないと何をやっているのか意味不明になりやすい。ラフミックス
ミックスで多分最も重要なイコライザーのポイントを最大公約数的に抜き出すとすると以下の感じ。・低音域……80/90/100Hz(LowShelf)
・中高音域…2.5kHz(Peaking)
・高音域……10/12kHz(HighShelf)
写真はベリンガーの安物のミキサーのもの。それぞれ80/2.5k/12kHz。マッキーなどでも90/2.5k/12kHzあたりで、例えばベースのトラックの90Hzをいじってみるとバスドラとのかぶりがとれたり、中高音域の2.5Hzで音の前後・音量感が変化したりまた耳にいたい所がとれます、10/12kHzで抜けが変わってきます。だいたい的を得た周波数域になっていてこの3バンドのEQとフェーダーの音量コントロールでをラフミックスを作っていき、うまくいかなければ音作りを見直す…といった感じで作業に分別がつくとミックスが楽になる。2バンドしかない場合は10kHz、100Hzのシェルピングタイプが多い。
DAWのチャンネルEQは高度なことができる分、今何をやっているのか意識していないと何のためにEQをいじっているのかわかりにくくなる。
ベースとバスドラは高域に含まれるアタックが肝心
初心者のミックスを見ると低音楽器の上の周波数域をざっくり落としていることが多いようですが、音がこもったようなバスドラやベースの音はあんまり耳にすることは少ないんじゃないかと思う。むしろ倍音域はかなり出て抜けを感じさせる。アタックは固めではっきりしつつも柔らかいサウンドにしてあげると馴染みやすい。
低音楽器の音が硬くなると高音域のパートとけんかする。
ギターバンド系で特にギターサウンドが大音量を占めるような場合、ベースの高音域はギターの音域を食う事になり、周波数の取り合いになる。
パートごとのイコライジング
大前提として録音の状態がよくないとギターとベースが同じような周波数域でかぶり団子になったりすることがあるので注意する。似たような音域でなっている楽器がなければハイ・ローパスフィルタをかけてかぶりをとると自然にすみわけがつく。
低域の出過ぎに注意する
バスドラの40〜60Hz付近と100〜130kHz付近にやたらとダブつく箇所があり、出過ぎていると低音にしまりがなくなる。100〜130kHzあたりはベースと喧嘩するので気づき易いですが、低音域が出過ぎている場合、モニターの再生環境によっては気がつきません。低音域をきっちりモニターしようと思うとそれなりに出力数の大きなスピーカーを用いて大音量を出す必要があるためですが、900STなどの低音域のしまった密閉式ヘッドフォンではイヤーパッドが低音域の出具合に応じてムァ〜と動くので気がつきやすい。バスドラとベースのドンとくるような膨らみは100Hzあたり、重みを感じさせるのは60Hzあたり。
そもそも録音状態がよくない場合がある。
中域は整理する
スネアが抜けてこない場合、他のトラックの中域が邪魔をしていることが多い。600〜1KHzぐらいはギター・ベース・シンセ・ボーカルなど楽器類が密集する。中域を多めにカットするとすっきりしやすいものの、堅い音にもなりやすい。耳が疲れてくるとやりすぎる傾向がある。
レンジ感
特定のパートをどれくらいのレンジを使うのか意識しながらイコライザーで棲み分けを行う。例えばハイパス&ローパスで狭めていくなど。パート数が多い場合結構なっている範囲が狭くないとどうやっても喧嘩する場合がある。タンバリンやシェーカーなど高音域のパーカッション類は点でなるような音像の方がミックスに合う場合もある。■堅い音
特定の周波数がでていない(あるいは出過ぎる)ことによってやけに堅い音質になることがある。コンプによっては800〜2kHzあたりが目立ってくる事もある。
ディストーションコントロール
歪みはゆがみではなく、ひずみと読む。テープによるアナログ機器の録音では入力レベルに応じて歪みが生じる。DAWを用いたデジタル録音では歪みはクリップノイズとしてあらわれ、アナログ録音のような倍音の持ち上がる歪み方はしないためどこかでサチュエーターをインサートするなど積極的にディストーションコントロールを行う必要がある。もし歪みが全くなければクラシック的で透明感があるかクリアすぎるきらいのあるサウンドになる。ほとんどの場合は後者。あと少し歪んでいると太さと柔らかさが加味されるのでミックスが馴染みやすい。スネアと金物類の高音域を目立たせたい場合、ちょっと歪ませるとイコライザーで持ち上げるのとは違った効果が得られます。ギターやベースの場合はアンプで歪み具合を調整できるけれどもコンプで聴感上の歪み具合があがるので後々の事を考えてあまり歪ませすぎないようにする必要がある。
高域あるいは低域の潰れなどクリーンなサウンドが実際には歪んでいることに気がつかないことがある。
■エフェクトについて
イコライザー
質の低いものは位相が狂って音が痩せたり、ブーストしてもきっちり持ち上がってくれない。位相が狂って高音域がシャリシャリしやすい。高音域をちょっと落ち着かせる、低音域に膨らみを持たせるような場合、イコライザーのキャラクターにも左右される。
イコライザーの質に注意する
イコライザーは結構質が問われるようです。On/Offで効果を聴き比べてみることが肝心です。あまり上の方までローカットすると音色自体が変わったり、位相が狂って高音域の特性が変わってしまうこともあります。通すだけで音が細くなるものもあるし、太くなったと思ったらやけに歪んでいたり濁るものもある。コンプレッサー
なるべくかかっている効果がわかり易いものを選ぶ。サンプリング系の音源なんかは単体の音自体に既にコンプがかかっていることが多いので注意する。
かかり具合は耳をたよりにするしかなく、メーターがついているタイプの場合、実際の聴感上のコンプのかかり具合とメーターの触れ具合がマッチしていなくて、ほんの少し振れているだけでも結構コンプかかかっていたりすることがある。
デイレイ・コーラス・リバーブ
空間系はほとんどデイレイの集合体なので、エフェクト音が音やせしているもの、ギラつきのあるようなものはなるべく避けたいものです。アナログ系とHi-Fiなデジタル系に大別できるんですが、アンプシミュが一つあると複数の空間系がセットで手に入ることが多いのでこれを使うのも便利な方法です。リバーブの上手なかけ方
プリデイレイで遅らせることにより元音とリバーブ音を分離させる方法はよく説明されているんですが、プリデイレイで遅らせる時間はだいたいアタック+αと考えるとわかりやすいかと思います。こうすることでサスティンの部分とリバーブの成分がうまくひっついた感じになってきます。リバーブにプリデイレイが付いていない場合は、「Size」のパラメータがついていて、プリデイレイの働きをする場合がある。「Size」もない場合はエフェクト音100%にしたデイレイをリバーブの前にいれて音を遅らせる。
■音質の向上
不要な歪みには注意する
ベースやバスドラにコンプをかけるとうまく圧縮できず「ブブブ…」みたいな感じで歪むものがあります。そのような場合は前段にイコライザーを入れて低域を少し落とす。低音がうまく処理できないコンプの場合は低音が軽くなったり変に音が濁っているだけのことがあるので注意する。
高価なエフェクトは必要なのか?
結論からいうと道具として使いものになるレベルのものがあるならば特別高価なものは必ずしも必要ないように思いますが、ガンガン安心してブーストできるイコライザやかかっていることがわかりやすいコンプレッサーはフリーではあまり転がっていないのでiLokだけでも買っていろいろと体験版を試用してみるというのはいい経験になるんじゃないかと思います。それと最近はaudiomidi.comやDontCrac[k]でVSTプラグインや音源のセールが行われていることが多いのでそういった機会を使うと安くいろいろと手に入り易いと思います。
■失敗は成功のもと
自分の経験からいうと録音(レコーディング)で問題があるものをやっぱりミックスでなんとかしようとしてた部分が色々とあって、いろいろと反省する思いです。例えばギターの録音であれば、ガッツのなくなっているギターサウンドや音像の遠いものをミキシング段階でなんとかしようとしても結構どうにもならなかったりするもんで、うまくいっていないな〜と思う場合、どこに問題があるのか判断することも大切じゃないかと思う次第です。
・作曲・アレンジ・楽曲の問題
・演奏・奏法・音色選択・音づくりの問題
・録音の問題
・ミキシング〜 音量・パン・エフェクトの問題
・マスタリング〜
・モニター環境
・気分・体調による聞こえ方の問題
記事リスト
- 音域の音量差の平均化について (2011-01-27)
- ミックスについて参考になるもの (2009-12-21)
- TB-URL http://t-plan.2-d.jp/2nd/blog/0230/tb/